郡山市、要介護認定の調査票チェックをAIで「1件40分→5分」に
- •郡山市は認定係の全業務を聞き取りで「見える化」し、デジタル化する業務と人が担う業務を仕分けたうえで、認定調査票の矛盾チェックにAI(自然言語処理)を導入。確認作業は1件平均40分程度から約5分に短縮した
- •介護認定審査会はウェブ会議化し、委員90人の約8割がオンライン参加に移行。A3で50〜100枚の資料を8部ずつ印刷・郵送する作業がほぼ毎日あったが、タブレットでペーパーレス化した
- •平均処理日数は45.1日(2018年度)から35.7日(2021年度)へ約10日短縮したが、申請増で2023年度53.1日・2024年度49.9日と再び延びており、国の標準30日にはまだ届いていない
全文を読む
郡山市、要介護認定の調査票チェックをAIで「1件40分→5分」に
福島県郡山市は、介護保険サービスを受けるために必要な「要介護認定」の事務を、業務の棚卸しから始めてAI・オンライン化で効率化した。デジタル庁が「アナログ規制見直し」の先進事例として、デジタル庁ニュース(2026年3月27日掲載)で詳しく紹介している。同じ東北の中核市の取り組みで、高齢化で認定件数が増え続ける仙台市にもそのまま当てはまる課題である。
何が起きているか
要介護認定は、全国の市区町村が調査から審査・判定までの一連の事務を担う。国が定める標準処理期間は申請から判定まで「30日」だが、郡山市では2018年度の平均処理日数が45.1日だった。申請件数は2018年度1万4,969件、コロナ禍で2020年度に9,929件まで一時減少した後、2022年度1万8,524件、2023年度1万7,261件と増加。2023年度の要介護(要支援)認定者数は1万6,461人で、市推計人口の5%にあたる。
担当職員の超過勤務も深刻で、2018年度は月平均約43時間と、市職員全体の約4倍だった。デジタル化後は2021年度13時間、2022年度16時間、2023年度13時間まで減っている。
一次情報の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出発点 | 2018年に着任した認定係の係長(当時)が「認定調査票の確認をAIで自動化できないか」と発案。複数の企業に「現在の技術では不可能」と断られたが、大手システムベンダーの子会社と協議を続け、2019年12月から約半年の実証実験を経て2021年3月に製品化・全国初の実装 |
| 第一歩は業務の棚卸し | 認定係の職員全員に業務内容・工程・業務量を聞き取り、全業務を見える化。一連の業務を4つのフェーズ(申請/認定調査/調査票確認=一次判定/審査会=二次判定)に整理し、デジタル化すべき業務と人が担う方が効率的な業務を分類 |
| AIによる調査票確認 | 認定調査票(74項目)の選択式「基本調査」と自由記述の「特記事項」の矛盾を、AIが自動で指摘。職員は指摘箇所だけを目視確認。見落としや経験年数による判断のばらつきも減った |
| AIを使うための下準備 | 手書き・差し込み印字だった調査票を直接入力できるPDFに変えてCSVで取り込む。特記事項の書き方(句読点・改行)のルールを統一し、同じ意味の表現をそろえる「文例集」を作成 |
| 審査会のオンライン化 | 1回30〜40件を審査、18合議体で年380回開催。厚生労働省の事務連絡(2020年2月・2023年5月)を根拠にウェブ会議化。各委員にモニター2台を貸与し、約半年の移行期間で不安を解消 |
| あえて見送った業務 | 認定調査のタブレット入力は、74項目を聞き取りながらの操作がかえって時間を要するため見送り。オンライン申請は整備したが、家族や居宅介護支援事業者による代行が多く、窓口利用が大半 |
| 担当者の言葉 | 「AIの精度が80%でも、残り20%を人間が担保すれば業務効率化を図れる」「完璧を求めすぎないこと」 |
| 国の動き | 厚生労働省の「介護情報基盤」が2026年4月に稼働開始し、準備が整った市区町村から順次利用。医療機関から郵送されていた主治医意見書が電子的に届くようになり、ケアマネジャーも認定情報をウェブで確認できるようになる |
出典:要介護認定事務の効率化はこう進める:郡山市に学ぶ、業務の棚卸しからAI導入まで(デジタル庁ニュース)
冷静に見るべき点
- AI導入だけでは処理日数は30日以内に収まっていない。 2021年度に約10日短縮した後、申請件数の増加で2023年度53.1日・2024年度49.9日と再び延びた。調査票確認を速くしても、認定調査の日程調整や主治医意見書の回収など、AIが関わらない工程がボトルネックとして残ることを示している。
- 効果が出たのは「下準備」があったから。 調査票の電子化(PDF→CSV)と記載ルールの統一がなければAIは正しく読めなかった。システムを買うだけでは同じ効果は出ない。これはデジタル庁が2026年6月に各府省庁向けに示した「AI導入の前に業務の見直し(BPR)とデータ整理を」という依頼事項とも一致する。
- 「見送り」も判断の一つ。 認定調査のタブレット化を見送った判断は、現場で試したうえでの合理的な選択として参考になる。
仙台市への示唆・議会質問の方向性
- 仙台市の要介護認定の平均処理日数と、30日以内に判定できている割合。 国の標準処理期間30日に対する本市の実績を年度別・区別に示してもらい、長期化している工程(認定調査の日程、主治医意見書の回収、審査会)を特定する。
- 認定調査票の確認作業へのAI活用。 郡山市のように基本調査と特記事項の矛盾チェックをAIで補助する仕組みについて、本市での検討状況を問う。あわせて、前提となる調査票の電子入力化と記載ルールの統一が進んでいるか。
- 介護認定審査会のオンライン化・ペーパーレス化の現状。 本市の審査会の開催回数、紙資料の印刷・郵送の量、オンライン参加の可否を問う。
- 国の「介護情報基盤」への参加時期。 主治医意見書の電子化で回収の待ち時間を短縮できるか、本市の利用開始の見通しを問う。
なお、認定・更新の事務負担を減らす論点は、竹中市議が2025年9月24日の決算等審査特別委員会(第1分科会)で取り上げた精神障害者保健福祉手帳の更新負担(症状が安定していても原則2年ごとに診断書が必要)とも地続きであり、「市民の待ち時間と手間を減らす行政手続きの見直し」として一体で打ち出せる。